トランシルヴァニア地方の村。出稼ぎ先のドイツで暴力沙汰を起こしたマティアスが、この地に戻ってくる。しかし妻との関係は冷めきっており、森でのある事をきっかけに口がきけなくなった息子、衰弱した父への接し方にも迷う彼は、元恋人のシーラに心の安らぎを求める。ところがシーラが責任者を務める地元のパン工場が、アジアからの外国人労働者を迎え入れたことをきっかけに、よそ者を異端視した村人たちとの間に不穏な空気が流れ出す。やがて、そのささいな諍いは村全体を揺るがす激しい対立へと発展し、マティアスやその家族、シーラの人生をも一変させていく…。
ブラム・ストーカーの古典的な恐怖小説「吸血鬼ドラキュラ」の舞台になったことで有名なルーマニア・トランシルヴァニア地方の小さな村を舞台にした群像劇。監督はチャウシェスク政権下のおぞましい社会状況を描いた『4ヶ月、3週と2日』でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したクリスティアン・ムンジウ。
村のささいな対立が深刻な紛争へと発展していく様を描きながら、幾多の火種を抱えたヨーロッパ、そして分断された世界の危うい現状を、まざまざとあぶり出した。そして住民が一堂に会する集会所でのクライマックスは、17分間にもおよぶ固定カメラの長回しショットで撮影され、私たち日本人にとっても他人事ではない"壊れゆく世界"の有り様が鮮烈に映像化されている。
ルーマニアの巨星クリスティアン・ムンジウによる、
不穏な新世紀の新たな現実と予言の黙示録。
しのび寄る現代ヨーロッパの怖れと狂気はいったいどこに向かうのか――?
マリン・グリゴーレ
Marin Grigore
マティアス役
エディット・スターテ
Judith State
シーラ役
マクリーナ・バルラデアヌ
Macrina Barladeanu
アナ役
監督・脚本
クリスティアン・ムンジウ
Cristian Mungiu
1968年生まれ。ルーマニア、ヤシ出身。デビュー作『Occident』は2022年カンヌ国際映画祭監督週間でプレミア上映され、ルーマニアでもヒットした。2007年、2作品目の『4か月、3週と2日』で第60回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞。様々な国際映画批評家協会賞を受賞し、ヨーロッパ映画賞では最優秀作品賞、最優秀監督賞を受賞している。2009年、脚本・プロデューサー・共同監督を務めたオムニバス映画『Tales from the Golden Age』で再びカンヌ国際映画祭に戻ってくる。そして2012年、第65回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で上映された『汚れなき祈り』は女優賞、脚本賞のW受賞を果たした。5作品目となる『エリザのために』が2016年、第69回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した。そして長編6作品目となる本作『ヨーロッパ新世紀』は第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された。
監督:脚本:クリスティアン・ムンジウ
出演:マリン・グリゴーレ、エディット・スターテ、マクリーナ・バルラデアヌ 他
原題:R.M.N
2022年/ルーマニア・フランス・ベルギー/カラー/シネスコ/127分/5.1ch 日本語字幕:関美冬 宣伝:テレザ、竹田美智留 後援:在日ルーマニア大使館
配給:活弁シネマ倶楽部/インターフィルム ©Mobra Films-Why Not Productions-FilmGate Films-Film I Vest-France 3 Cinema 2022
第75回カンヌ国際映画祭
コンペティション部門出品作品